趣味を本業へ ジュエリーアーティスト‐Daisyさん‐
オーストラリアで活躍する日本人にインタビューする【豪州の素敵な日本人】第2回。
Daisy(デイジー)さん メルボルン在住・ジュエリーアーティスト
Amih Jewellery オーナー&ジュエリーアーティスト。日本やヨーロッパから輸入した高品質な素材を使い、メルボルンで1点1点手作りしたジュエリーを販売。メルボルン周辺のウイークエンドマーケットやオンラインショップで購入できます。
画像: https://www.instagram.com/amih_jewellery
趣味を本業に
2014年にオーストラリア・メルボルンに移住し、2015年から不定期に週末のマーケットで手作りジュエリー(アクセサリー)を販売していたデイジーさん。コロナ禍の影響を受けつつも、彼女が趣味を本業にするまでのストーリーです。海外でのキャリアに悩む人へのエールになるかもしれません。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
1年の予定で日本を出発
ー オーストラリアに来たきっかけは?
もともと英語学科出身で、イギリスに1年大学留学をしていたこともあり英語で仕事をすることに興味がありました。英語を使う環境を求め、大学卒業後は外資系企業で通関サポート業務や日本企業での海外顧客への商品説明の業務を経験しました。 そんな中ワーキングホリデーを使いメルボルンから帰国したばかりの後輩と働くことになり、その後輩が「メルボルンが本当にいいところだった、帰りたい!今のうちに絶対行ったほうがいい!」とメルボルンストーリを毎日のように話してくれました。
単純な私はそれを聞いてますます海外で働くことに興味が湧き、行くなら今しかない、後悔したくないと20代後半にワーキングホリデー制度を使うことにしました。 決めてからは動くのが早い方なので、そこからすぐに一人暮らしの荷物を倉庫にすべて預け日本を飛び立ちました。 荷物のこともあり1年で帰る予定ではいましたが、心の中ではその1年でできれば正社員、その後もオーストラリアにいられる道を得ることを目標にオーストラリア生活が始まりました。
ーオーストラリアの印象は?
オーストラリアに来てすぐに「あ、この国が好きだな」と思いました。周りのことをあまり気にすることもなく言いたいことを言えるし、居心地が良くて自分に合っているという印象でした。当時はまさかこの国に長期で滞在するとは想像していませんでしたけれど。
週末マーケットへの出店
Fitzroy marketでの初めてのマーケット出店
ーオーストラリアでジュエリーを売ろうと思ったきっかけは
「それ、売れるよ!」という友達の一言です。もともと日本で趣味でアクセサリーを作って友達にあげてたくらいで素人だったんです。たまたま自分が作ったスワロフスキーのピアスをつけていたら、オージーの友達に「それ可愛いね!どこで買ったの?」と聞かれて自分で作ったと言ったら、「自分で作ったの?それ、絶対売れるよ!」と言われてじゃあやってみようかと。仕事のない週末に、試しにマーケットに出店してみることにしました。その初回のマーケットで偶然(オーストラリアガイド運営の)Yuriさんもアクセサリーを販売していて出会ったんですよね(笑)。お互い初めてのマーケット出店で。懐かしいですね。
ーAmih Jewelleryの最初のジュエリーが売れた時のことを覚えていますか
もちろん、今でも1つ目のジュエリーが売れた時の感動を覚えています。嬉しかったです。実は、Amih Jewelleryの最初の1点は、私が最初のマーケットからずっと変わらずつけているピアスなんです。この先ずっとジュエリーを作り続けようと思いました。
デイジーさんが今でもお守り代わりにつけているAmih Jewellery最初の1点
正社員を目指して奮闘
ーどうやって正社員になったのでしょう?
オーストラリアに来てからは、正社員として働ける会社、できればビジネススポンサービザをサポートしてくれる企業に絞って仕事を探しました。
最初に決まったのは、ドイツの時計ブランドの日本市場に参入へのマーケティングポジションでした。インターンで無給でしたが、スポサービザをサポートしてくれるということで働き始めました。残念ながら結局スポンサービザの要件を満たせないことがわかって退職しました。次に、語学学校のマーケティング兼アドバイザーとして正社員の職に就きました。この頃には永住を視野に入れていました。この会社では3年働き、その間に永住権も取れました。
ー日本語学校では日本人担当のアドバイザーだったとのことですが、日本人ならではの悩みなどもありましたか?
そうですね。日本からの生徒さんは、気になることや悩んでいることがあっても人に言えないまま限界まで我慢してしまって、私のところに相談に来てくれた時点では限界を超えていることが多くて、「大丈夫だよ。」と声をかけると溜まっていた気持ちが溢れ出して泣き出してしまう生徒さんが多かったです。英語が話せるかどうかではなく、言いたいことを言う他の国の生徒さんに比べて内に秘めてしまう傾向がありましたね。オフィスの部屋にはいつもティッシュボックスが置いてあって、そんな生徒さんの気持ちを一緒に受け止めていました。
趣味を本業にすることへの抵抗
ーその後もオンラインや週末のマーケットでジュエリーを販売しながら、本業では他の職種に挑戦されていますね
そうですね。語学学校に勤務中にコロナでボーダーが閉まってしまった影響で、ほとんどの生徒さんが母国に帰ってしまったため、仕事でやれることがかなり少なくなりました。他の業界への転職を考える際に「ジュエリーを本業にするか」というアイディが一瞬頭をよぎりました。でも、まだここでは思いきれず、他のオプションを探して金融業界へ転職しました。今までのように「日本人だから/日本語がわかるから」という理由ではなくて、純粋に経歴で選んでもらえたことが嬉しかったです。
不定期にマーケットに出店していた頃
ーその時点である程度売上が立っていたジュエリーを本業にしなかったのはなぜですか?
ジュエリーは、ずっと続けるつもりでいました。ただ、本業で仕事にした途端にストレスになると思って怖くて思い切れませんでした。私にとってジュエリーを作る時間はただ無になって集中できる癒やしの時間。その癒やしの時間が楽しみじゃなくなってしまったら嫌だな、と本業にするつもりはありませんでした。また、家族からのサポートも一切なく自分一人で生計を立てていく必要があったために、経済的な不安もありました。
失うものがなくなった
ー本業でやっていこうとしたきっかけは
前述の金融系のアドミンポジションで1年ほど働き、その後前職の経験をもとに更に2回転職しました。良い経験とはなったのですが、会社の方針や人間関係等思うようにいかないことは多くストレスは増える一方。 そんな時に人の下でコントロールされるのは嫌だ。自分でコントロールできる土台を創り上げたいと強く思うようになりました。
ーそして2023年ついに本業へ
ちょうど同じ時期に家の契約も切られることを知り、家族もパートナーもいない中、もう自分でなんとかするしかないという危機が、逆に今なら何も気にすることなく全て自分で決められるという発想になりました。オーストラリアに来た時のように、フラットなゼロの状態に戻った、そんな気がしました。 転職を何度かしていたことから、ダメだったらまたフルタイムを探せばいい。今はお金より自分を大切にしよう。 そんな気持ちで、ついに2023年1月からジュエリーを本業にすることに決意しました。1年は収入がなくても生きていける。とにかくやってみよう。ストレスを抱えないように生きていこうと思いました。
オーストラリア中のブライダルショップにメール
ージュエリー販売でストレスを感じることはありましたか?
初めの頃は、ブランダルにも身につけてもらえるようなスワロフスキーを使ったキラキラのジュエリーをメインに作っていたのです。そのため、インターネット上で探しうるオーストラリア中のブライダルショップ全てにメール送って、ジュエリーを置いてくれるショップを探しました。そのやり取りの中で、オーストラリア企業とのコミュニケーションにとても困りました。返信はこない。来ても途切れる。せっかくジュエリーを置いてもらうことになったお店ともコミュニケーションがスムーズにいかない…。
ストレスを取り除くことが目的で起業をしているのに、そこでストレスを抱えるのが嫌で、利益が高いマーケットでの直接販売とオンラインでの販売にフォーカスすることにしました。また、キラキラ光るスペシャルなジュエリーからもっとデイリーユースできるシンプルな飽きのこないデザインへとシフトチェンジをしてきました。自分自身もキラキラよりも違うものが好きになってきたので、自分の好みもジュエリーに反映されていますね。
重ね着けしても可愛いシンプルで飽きのこないデザイン
仕事のストレスがゼロ
ー実際に、好きなことを仕事にしてみて、どうでしたか?
ストレスって何だっけと思っています(笑)。自分の大好きなジュエリーを仕事にすることにたどり着いて、未だに楽しいです。週末のマーケット出店の時にはお客さんから私のジュエリーをほめてもらえて。毎日つけるものや人生の晴れ舞台にブランダルのアクセサレーを選んでもらえるってすごいことですよね。今が人生で一番ストレスフリーです。
ー在庫はどうしていますか?
基本的に売れたものを作るMade to order方式をとっているため在庫は持ちません。材料はほとんど日本から仕入れているというのもあり、作ってしまって売れないとパーツも無駄になってしまってもったいないので。
ビーチでBBQをするおばあちゃん
ーどんなライフスタイルを送っていますか?
自分のペースで生活をしています。やることは多いけれど、好きなことを好きなタイミングでしているので生活と仕事のバランスは保っています。ただ常に一人で仕事をしているので、できるだけ外に出てリフレッシュすることは心がけています。ストレスが掛かることはとにかく取り払っているので快適です。
最近の出店の様子
ー今、欲しいものはありますか?
それが、物欲が更になくなりましたね。最近、ブラックフライデーセールに向けてほしいものリストを考えていたのですが、自分に買いたい物は思い浮かびませんでした。ビジネスで使うためのビーチトローリー、テントの重し、テーブルを高くするディスプレイ、ジュエリーパーツ等はほしいなとは思うのですが(笑)。
ー今後やりたいことはありますか?
特に大きな目標は決めてないのですが、小さな目標を沢山立てて少しずつ達成しています。将来的にもジュエリーをずっと作り続けたいですね。あとは、ワークショップもやってみたいです。運営の面では、売上を上げて人を雇えるようになりたいですね。オンラインショップの更新が追いついていなくて。
ー将来思い描いているご自身の姿は?
日本にいた時は、ボンヤリと、「おばあちゃんになったら縁側でみかんを食べる」という自分を描いていたのですが、今はそれが想像できず、「ビーチでBBQをするおばあちゃん」になるのではないかと思っています(笑)。自由に、型にはまらず、周りの目を気にせずに、適当感を持って生きていこうと思います。
画像: https://www.instagram.com/amih_jewellery
起業したい人へのアドバイス
アドバイスできるようなことはしてきていないのですが…。あえて言うなら、何か「やりたいな」と思ったら試してみるのが良いと思います。だめだったら他にも道はあるので、まずは試す。結局は「言ったもん勝ちやったもん勝ち」。悩みとか要求とか思ったことを素直に口に出すのが良いと思います。あとはポジティブに、覚悟と行動力さえあれば何とかなると思います。
終わりに
私(Yuri)がオーストラリアに移住してきてから10年以上立ちますが、その中で出会ってきた友人の中でも最も自分の心に素直にキャリアを選んできたのがDaisyさんだと思っています。今回、友人としてオーストラリア移民の戦友として応援してきた彼女のストーリーを皆さんにシェアできて嬉しく思います。
実はコソッと聞いたAmih Jewelleryのブランド名誕生秘話があるのですが、それはDaisyさんに直接会って聞いてみてください。クスッと笑える由来が隠されています。
Daisyさんのマーケット出店情報はInstagramをチェックしてくださいね。
※最後まで読んでいただきありがとうございました。オーストラリアガイドでは「豪州の素敵な日本人」特集でインタビューさせていただける方、または自薦他薦のご紹介をお受けしています。同時に、オーストラリア国内で日本語対応のサービスを提供されているビジネスのリストも作成中ですので、掲載希望の方はご連絡ください。法人個人を問いません。(掲載は無料ですが簡単な審査があります)。