オーストラリア暮らしの理想と現実
私の経験ですが、幼少期と高校時代にオーストラリアを訪れたことがあり、少しはオーストラリアのことをわかっている気になっていたのですが、旅行や1週間程度のホームステイでわかることと、実際に数年暮らしてみることで見えてくる現実には結構なギャップがありました。
なので、オーストラリア移住前と後のギャップを理想と現実10選にまとめてみました。オーストラリア移住って実際どうよ?と思われている方の参考になれば嬉しいです。
移住前:オーストラリア暮らしのイメージ(理想)
1,フレンドリーなオージーが自分とも仲良くしてくれる
2,移民にも優しい国で差別もない
3,日本より物価が高くてお給料も高い
4,オージーはホリデー&旅行が大好き
5,スローライフで皆のんびりしていてサービスもゆっくり
6,ビーチだらけで南国っぽくて年中温暖な気候
7,食べ物はステーキくらいであまり美味しくない
8,キッズフレンドリーで子育てしやすそう
9,英語ができなくてもジェスチャーでなんとかなる
10,コアラやカンガルーがそこら中にいる
移住後:オーストラリア暮らしの現実
そんな私の移住前のイメージ10選が移住後にどう変わったのかを、ひとつずつリアルな現実を解説していきますね。あくまでも私の場合で誰にでも当てはまるわけではないので、参考程度に思ってもらえたら嬉しいです。
1,フレンドリーなオージーが自分とも仲良くしてくれる
オージーは誰にでもフレンドリーだからきっと見ず知らずの外国人の自分にもフレンドリーにしてくれるはず。そんな気がしませんか?現実はYes & Noです。
そうです。基本的に日本人に比べればオーストラリア人はフレンドリーでおしゃべりな人が多いのは確かです。知らない人にも話しかけるのはカルチャーなので、たまたま会った人と仲良くなれる率は相当高くなります(英語ができればですが)。ただし、その場限りのフレンドリーさがほとんどです。日本でも日本人は日本人同士で固まりまるように、ローカルの人はローカルの人でコミュニティーが完結しているので、深く仲良くなろうと思うと想像以上にけっこうな努力が必要となります。そして、会話に入ろうと思うとオーストラリアなりのCommon sense(常識)もがある程度わかっていることが前提で、わからなかったとしてもそこはぐいぐい入り込んで行く姿勢が重要です!
人間は、共通点があるほどすぐに仲良くなれるので、最初は同じ「移民」や「アジア人」と仲良くなるのも手です。私が最初にできた親友と呼べる友人はイラン・韓国・マレージア人でした。人種関係なく誰かと仲良くなると楽しいですし、凝り固まった固定概念が何重にも覆されて面白いです。お互いの国とオーストラリアの違いを比べたりして笑い合ったり。
今は田舎に住んでいるためほぼオージーに囲まれていますが、田舎は更に人間関係ができあがっているのでとっても大変で、前のめりに入り込んでいるところですがまだまだですね。娘と同じ保育園に2年一緒に通っている一番仲良しの女の子のママに「いまスマホ持っていないから!」1年間連絡先すらはぐらかされて教えてもらえませんでした。英語もスムーズでないし、きっとやり取りが面倒くさいと思われたんでしょうね(笑)今では仲良しですし、そこを突破口に娘関係の人間関係が少しずつ広がっていますが、関係維持に普通のオージー以上に努力している、というのが現実です。でもそれはきっと日本の田舎でもそうで、どこの国でも同じだと思うので、郷に入らば郷に従え(豪に入らば豪に従え)で無理のない範囲でじっくり関係構築がんばっていこうと思います。
2,移民にも優しい国で差別もない
これは、なかなか難しい問いですが、これも現実はYes & Noというところです。わかりやすいあからさまなアジア人である外見による差別やヘイトというのは少ないですが、「オーストラリア人ではない」ということで区別されることは普通にあります。日本でも日本人と外国人がサービスを受ける際に区別される場面はけっこうあるので、単に「違う」だけの問題なので、深く考えないに限ります。日本でも日本語がわからない外国人にわざわざ事細かに全て説明したりわかってもらおうと期待しないように、英語が喋れないのにローカルの人と同じように扱ってもらうのは厳しいというだけのことです。そこに傷ついて心をすり減らす意味もないので、そんなものだと思ってスルーします。英語は永遠のテーマですが、「ネイティブレベルの英語」を目指すとゴールが遠すぎてストレスを感じるので、自分なりの「コミュニケーションがスムーズに取れる程度の英語」を目指していけばよいと思っています。
また、住んでいる場所が都会か田舎かにもよります。メルボルンやシドニーなどの都会はもはや移民のほうが多く、移民であることで差別されることも少ないので、自分が外国人や移民であるということをあまり意識しないで暮らせます。
逆に、私が今いる場所が田舎のために日本人もアジア人もそこまでいないのでちょっと目立ちます。日常生活でも相手は私を知っているのに私が覚えていない(皆同じ見た目に見える…)ということは多いです。また、都会ならわかってもらえる英語も、田舎だとオーストラリア人の英語以外のアクセントも慣れていない人が多くて無駄に聞き返されます。2年住んで、今は、むしろ世間知らずのオージーに異文化体験の機会を与えている、くらいに開き直っています(笑)。
全体として、日本人に好印象を持っているオージーまたは移民が多いので、日本人であるだけで得しているなと思う場面がたまにあります。ただ、第2次世界大戦で日本軍と戦った人は根深い日本嫌いもいるので、全ての人に好かれることは難しく、場合によっては話題の配慮が必要です。
3,日本より物価が高くてお給料も高い
これはシビアな問題、というか年々インフレ&経済成長で差が開いてきています。私達が引っ越してきた2014年(約10年前)は物価が日本の1.2-1.5倍と言われていたのですが、今は2-3倍と言われています。オーストラリアでは毎年物価が上昇するのが普通で、日常的にシレッと値上げされています。特に年が変わる1月と7月には価格改定しますので、カフェやレストランから公共交通機関まで値段が上がります。最低時給も毎年1,2回引き上げになりますし、価格上昇に文句を言うことは少ないですね。もちろん、ああまた値段上がったー!生活キツイ!!とはなりますよ。でもそれが販売しているお店やサービス側の問題でないことはわかっているので彼らに文句は言わないというところです。
因みに私達がメルボルンに来た当初のコーヒー1杯の値段は$2.5-2.8(250-280円)でした。現在は$5-6(500-600円)位です。メルボルンのコーヒーは競争が熾烈なのでシドニーやパースなどの都市よりも安いです。また、メルボルンメトロエリアの公共交通機関の片道料金は$3.2(320円)から$5.3(530円)となりました。
4,オージーはホリデー&旅行が大好き
これはホントです!もはやホリデーのために働いていると言っても過言ではないと思います!オーストラリア人がホリデーに使う費用は、1週間で$77(7700円)で年間で$4004(40万円)、30%が1回の旅行で$5000‐$1万(50万円〜100万円)を旅行に使っているそうです。
金曜日の午後は週末への準備で月曜日の朝は週末の疲れを癒やす時間でもはや半休みたいなモードなのが衝撃でした。
5,スローライフで皆のんびりしていてサービスもゆっくり
これは都市によります。シドニー、メルボルン、キャンベラなどの大都市はビルが立ち並び、人も意外とセカセカしていて、レストランやカフェでも隣の席も近くて落ち着けないことも。オーストラリアはのんびりというイメージがあると一瞬で覆されます。日本からメルボルンにワーキングホリデーできた横浜出身の元看護師の女性が、その忙しなさについていけず、1週間で鬱になって帰国したのを見たこともあります。逆にゴールドコースト、ケアンズ、ブリスベンは日本人が思うスローライフな生活を送っている人も多い印象です。
サービスに関してはご想像どおり?ゆっくりです。日本の吉野家やすき家みたいな速さのサービスはファーストフード以外ではありえないですし、カフェやレストランなどでも注文したらたいてい飲み物だけ先に来て、食べ物は30分くらいはザラで1時間とか待つことも。どんなにお店が混んでいてもスタッフは休憩に入ります。でも、働く側としてはお客さんからの期待値が低いので働きやすいという印象です。マニュアルもほとんどなく人によってサービスのブレがあるので、店員AがNOと言ってもBに交渉すればOKとなることもあり、フレキシビリティがある良い面も。
因みに日本とのサービスの差で一番驚いたことが、宅急便の時間指定どころか日付指定すらできないということです。宅配業者によっては、いつ来るかもわからない荷物を数日や1週間延々に待つことになります(笑)。しかも、再配達の制度もありません。不在で受け取れなければ指定の場所に自力でピックアップに行きます。重かったり大きいものだと最悪です。田舎だと不在でも家の前に放置してくれたりしても盗まれることは少ないですが、都会のマンションのエントランスに置き去りにされると紛失も日常的にあります。また、クール宅急便もないので、冷蔵冷凍ものは送れません。もしかして、オーストラリア住める気がしなくなりましたか?(笑)一応ポジティブ?なこともあって、宅配業者によっては配達日の前日や配達日に今から配達するよ!とメッセージが届いたり、転送がオンラインで指定できるので、オンライン化が進んでいるは便利な点です。
6,ビーチだらけで南国っぽくて年中温暖な気候
これは、都市によります。オーストラリアは日本の10倍の国土があり、場所によって属する気候帯も違いますし、国内でも時差●時間があります。
ビーチだらけなのは東側海岸のゴールドコースト、ケアンズ、ブリスベン、西側はパースなどの都市。ただ、年中泳げるかというとそうでもなく、またケアンズなどはワニや刺されたら死んでしまう巨大クラゲなども生息するため広いビーチの中でもほんの一部のネットで覆われた安全な場所しか泳ぐこともできません。なので以外にもビーチよりもプールで泳ぐイメージです。
7,食べ物はステーキくらいであまり美味しくない
そんなことはありません!ステーキが赤みで硬いのは本当ですが(オージーは霜降りでなくて赤身の肉を好むので)、今のオーストラリアは移民による多国籍料理や独自のオーストラリアのカフェ文化が定着し、美味しいものが沢山あります。多国籍料理も本当にその国々で食べるレベルまたはそれ以上に美味しく、感動します。どのお店に入ろうかと迷ったら、混んでいるお店に入れば間違いありません。外食の値段は日本の2-3倍位ですが、量が多くて案外お得なので、ぜひいろいろな料理を試してみてくださいね。事前にお店を調べていく場合、オーストラリアではGoogleマップの口コミを参考にする人の割合が圧倒的に多いので、そちらもぜひ参考に。
8,キッズフレンドリーで子育てしやすそう
A BIG YES!! です。どこもかしこもキッズだらけです。実は私達夫婦が東京からメルボルンに移住してきた理由が、英語圏だからというのと「子育てしやすそうだから」でした。高級レストランのディナーやバー以外はほぼどこでも連れていける環境です。公園も整備されているし、赤ちゃんが泣いたり子供が叫んでいても、嫌な顔をされることは少なく、むしろ積極的に「どうしたの?うちの娘もよく泣く子だったのよねぇ…。」などと気さくに話しかけてくれます。
でも、良いことばかりでなく、ネガティブポイントもあります(笑)子供は12歳まで親の保護下になければいけないため、家に置いていったり一人で出かけさせたりできません。海外で親が小学校や中学校に送迎する映画のシーンを見ること沢山ありませんか?あれって防犯面だけでなくてそういうルールがあるのも理由なんです。なので、親は毎朝毎夕子どもの送迎をします。仕事をしていても遅刻早退が簡単にできるように見えるのは、そういった事情があってなんです。日本みたいに集団登下校させたり電車やバスで自力で学校行ったりというのは高校生からで、いかに日本が安全で子供が自立しているかというのを改めて考えさせられます。
9,英語ができなくてもジェスチャーでなんとかなる
恐らくこの答えは旅行ならYes, 移住するならNoです。1週間程度の旅行で訪れるならジェスチャーとかスマホの翻訳を使えば生活できますし、極論を言うなら移住してもジェスチャーで生活できないことはありません。ただし、日常生活を快適に過ごしたい場合、やはりある程度の英語力は必要です。なんせここは英語圏ですので。
Hello, How are you?にI’m fineしか言えないところからの海外生活スタートだと大変すぎるので、日本にいる間にAIと話して語彙を増やすアプリだったり、オンラインでも破格で海外の人と英会話ができるサービスが今はあるので、そういうのも利用して準備してから移住するのがコスパ的にも良いかと思います。
因みに私の場合、たまたま日本で出会った夫が外国人で母語が英語の人だったので、日本にいても英語に触れる機会があり、オーストラリアでもどうにかなると思い込んでいました。が、甘かったです…。移住して最初の方は別れ際の「Hove a good day!」すら聞き取れず、3回も聞き直して嫌な顔をされたり(笑)オージーイングリッシュもちゃんと事前予習しておけばよかったなと後悔先に立たずでした。
海外に行かなくても、リーズナブルに英会話の場数を踏める
ある程度英語の基礎ができていてテストでは点が取れるという場合、英語を聞いて話すという場数をこなして実際の現地での英会話に備えることができるこちらのオンライン英会話がお勧めです。
基礎英語ができていないから渡航までに準備していきたい
そもそもの英語力が低く単語や文法があやふやな場合は英会話のレベルが上がりにくいため、AIを使ったアプリなどでまずは基礎的な英語力を身につけるのが近道だと思います。
10,コアラやカンガルーがそこら中にいる
そんなイメージがありませんか?これは、場所によります。都市部で野生のカンガルーやコアラを見ることはまれですが、田舎はカンガルーがビョンビョン飛びまくっています。野生のコアラは見つけるのが結構大変で、ユーカリの数が減っているのに比例して個体数も減ってきているらしく、殆どの場合コアラは特定の保護地域で見たり動物園で見れるものとなっています。田舎の場合は地元民にコアラの目撃情報を聞いてみると知っていたりするので、ぜひ聞いてみてください。
また、カンガルーやコアラ以外にもオーストラリア特有の野生動物にウオンバット、ポッサムなどがあり、身近に見れることもあります。カモノハシはコアラより更に見つけるのが大変ですが、これも地元民の目撃情報を集めると運が良ければ見れるかもしれません。オーストラリアに来た際は、ぜひ運試しを兼ねて野生動物を探してみてくださいね!
全てが完璧ではなくても、オーストラリアに移住してきてよかった。
以上が私のオーストラリア移住前と後のギャップを理想と現実10選です。いかがでしたか?あなたの知りたいことは10選に入っていましたか?
移住成功の秘訣は、「何のために移住するのかを明確にすること」だと思っています。私達夫婦が東京からメルボルンに移住してきた理由は大きく3つ、①将来できるであろう子どもと家族での暮らしを楽しむためにバランスの良い国に住みたい②英語圏で子育てしたい③収入が良い職(仕事)につけるでした。
結果的に私達がオーストラリアに移住してきたことは総合的には良い決断だったと思っています。今のオーストラリアの経済的発展状況や、ダイバーシティ、家族を大切にする文化が気に入っていて、この国で家族での暮らしを楽しんでいます。不満なのはサービスレベルですが、自分がサービスする側になる場合は期待値が低くて楽なのでここは目をつぶっています(笑)
逆に時間通りにマニュアル通りに生活や働きたい人には絶対お勧めしません。また、あなたにとって自分のパートナーや子供以上に自分の両親が大切な場合も、物理的に会いづらい海外移住は両親の老後のケア問題なども出てくるためにお勧めしません。海外移住はあくまでも自分の理想を叶えるための1手段であって、あなたにとって大事なことを優先できる国に住むことが幸せにつながると思いますし、国を変えずとも地域を変えたりすれば案外理想に近づけるかもしれないとも思います。
最後に、私には、「完璧な国は世界中探してもないけれど、自分に合う国はあるかもしれない」という持論があります。といっても世界10カ国くらいしか行ったことがないのにずいぶん大げさな表現ですが(笑)オーストラリに旅行で来たのが35年前、25年前、そして10年前の移住。この40年くらいの経済や時代の変化を少しは肌で感じることができていると思っています。一人娘が巣立つまでのあと15年位は子育てのために移住したこの国にいるかもしれませんし、また違う国に移動するかもしれません。移住しても一つの国に住み続けなければいけないという決まりもありませんし、そのライフステージに合った場所にシフトしていけばいいかなと思っています。そして、日本・オーストラリアを含む4カ国に住む権利を持っている娘が、将来どの国で暮らすのかも興味深いところです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひまたオーストラリアガイドを覗きにきてくださいね。Yuri